株式会社パワーソリューションズ 代表取締役社長
基幹システムでは届かない“ラストワンマイル”を埋めるDX事業とは何か。そして、その最前線を担う人材をどう育てているのか。社長自らが、金融を中心とした伴走型のビジネスモデルと、5か月研修・社内大学を軸にした育成の仕組みについて語ります。
2004年パワーソリューションズ入社。2016年から副社長として株式公開準備を担当。上場後はDX関連の調査や経営企画に取り組む。2021年に代表取締役に就任。
リクライブ編集長。1991年福島生まれ。4,000本超の動画・Podcastを制作するインタビュアー兼コンテンツプロデューサー。
パワーソリューションズは何をしている会社ですか?
世の中で言われているDX推進をやっている会社ですが、立ち位置は少し特殊だと思っています。
DXを進めるとき、まず企業の中のDX推進部やIT推進部が主体になります。そこに外部の力としてSIerやITコンサルが入って、部門ごとに最適化された基幹システムを導入します。ただ、そうやっていくと部門間で壁が生まれるため、横串を通すソリューションが必要になってくる。基幹システムでは足りない“ラストワンマイル”に対応するのが我々というわけです。
「ラストワンマイル」というのは具体的に言うと?
大手SIerさんは基幹システムをいろいろな会社に使ってもらいたいので、業界の最大公約数でパッケージとして作っています。そのため現場から見ると「あと一歩足りない」部分が必ず出てくるし、経営陣としては部門ごとの基幹システムのデータを横断的に見たいのにそれができないという状況になります。
そこをパワーソリューションズが埋めると。
そうです。それぞれの基幹システムに足りないところに横串を通してDXを推進していく役割です。
金融のお客様が多いと聞きました。どのような業務をされているんですか?
メインのお客様は資産運用会社です。NISAやiDeCoで投資信託が身近になりましたが、その商品を実際に運用しているのが資産運用会社です。
資産運用会社の業務は、フロントオフィス(発注)、ミドルオフィス(分析)、バックオフィス(基準価額計算)に分かれていて、それぞれに専門の基幹システムが入っています。私たちはそれらのデータを相互的に連携させて業務に必要なシステムを外側に作ることをしています。
競合はいるんですか?
基幹システムを作る会社は多いですが、我々のように足りないラストワンマイルを担う会社は少ないですし、競合はかなり少ないと思っています。だからこそ説明しづらいところではあります。
資産運用業界を外れたところだと、近年はRPAで業務プロセスや部門横断の処理を自動化するというソリューションを提供している会社が増えてきて、RPAを使う会社やITコンサルが競合になることはあります。
ただ、我々はシステム企画して終わりではなく、実装・運用・改善まで一気通貫で伴走します。使い続ける中で改善ポイントを見つけて追加提案していく、カスタマーサクセス的な動きをしているため、長期的なお付き合いをしている会社が多いのが強みです。
大手SIerとの違いはありますか?
大手SIerさんは、受注金額も規模も非常に大きく、基幹システムのように「絶対に止まってはいけない」仕組みを、数年単位のプロジェクトで作るのが中心です。多くの人数を集め、完璧さを前提に進めていく仕事ですね。
一方で、私たちが担っているのは、基幹システムでは対応しきれないラストワンマイルの領域です。制度変更や新商品への対応など、業務の変化に合わせて素早くシステムをフィットさせていく必要があり、機動力や柔軟性が求められます。
そのため、私たちは最初から最後まで一気通貫で関わり、使いながら改善し続けるスタイルを取っています。業務が回り続ける状態を支え、長期的に伴走していく。そこが大手SIerの業務との一番大きな違いです。
社長交代後、会社として変えたことはありますか?
幹部のメンバーたちとビジョン・ミッション・バリュー・スピリットを明確にしたことです。経営者も社員も理念に真っすぐ向かっていく組織を目指しています。
それはなぜ必要だったんでしょう?
以前はカリスマ的な社長を見て仕事をする側面もありましたが、誰が社長かに依存する会社だと、世代交代のたびにぶれてしまう。理念を軸にしておけば、次の世代、その次の世代にも、ぶれない形で組織継続ができると思っています。
会社の状況としてはどうですか?
DX市場の追い風もあり、業績は好調です。金融、物流、製造と、私たちが関わっている領域も成長しています。
一方で、2030年にはIT人材が80万人足りないと言われています。市場はあるのに人が足りない。だから全部をゼロから“つくる”のではなく、世の中にあるソリューションをうまく“つかう”方向に舵を切っています。
「つくるからつかうへ」という話ですね。
そうですね。ただ“つくる”ということがわかっていないと、“つかう”ということに応用ができない。基礎的なIT能力は絶対的に必要だと思っています。だからこそ、新卒の育成や学びの仕組みを大事にしています。
新卒で入社すると?
まず5か月間の研修で、文系・理系を問わず基礎的なITスキルを身につけます。大学生の単位を取るよりも大変なぐらいやります。
社内大学の取り組みも特徴的ですね。
私は学びはエンターテインメントだと思っています。現場に出ると必ず「足りない部分」に気づく。そのラストワンマイルを埋めるための学びを楽しんでもらいたいし、それを社内大学が支えています。
具体的にはどんな仕組みですか?
シラバスがあり、階層別に年間約100時間の学習コンテンツを用意しています。業務時間中に学ぶこともできるし、業務後ワークショップが開催されていたりします。アーカイブになっているので、後で見ることもできます。外部講師だけでなく、社内のメンバーが講師になることも多いです。
教える側にもメリットがありそうですね。
教えることが一番の学びになる。知が社内で循環し、仕事と成長が自然につながっていく。それが私たちの文化です。ぜひ継続的に学ぶことに意欲的な方へご入社いただきたいですね。
新卒で入社すると、どんな経験ができますか?
まずは基礎的なITスキルを身につけます。弊社はプライム案件、つまりお客様から直接仕事を受けることが多いため、お客様と直接対話しながら仕事を進めます。
大手との違いはどこにありますか?
大手の巨大プロジェクトは、2〜3年かけてシステムを作ることが多く、新人はテストだけ、プログラミングだけのように、工程の一部だけということも起きやすい。
一方で当社は、2か月、6か月、長くても1年〜1年半くらいで作るシステムが多い。だから、2〜3年の間に「最初から最後まで」プロジェクトを5〜6回と経験できる。実際に手を動かしますし、お客様との対話もします。
ゼネラリストが育ちそうな環境ですね。
最初から最後までプロジェクトを何度も経験できるというのは本当に大きいです。前のプロジェクトでの反省や工夫を次にすぐ活かせるし、若手のうちから提案の主体になれる環境は弊社の特徴だと思います。
また、資産運用に強いとか、業務自動化のソリューションに詳しくなるとか、軸は積み上がっていくので、結果的にスペシャリスト的な力も高まっていくと思います。
社員の方に高橋社長のことを聞いたら「社員との距離が近い」という共通点はありつつ若手からは「真面目」、長く働いている人からは「昔はおちゃめだった」という声があったんですが、どっちなんでしょう?
社員との距離は近い方だと思いますし、若手から見ると真面目な印象になるのも分かります。一方で、昔は発表会でふざけたことをやっていたこともあって、おちゃめな面もありました。
社長になってからは、たしかにおちゃめな部分は出てないかもしれないですね。
上場して、コンプライアンスを意識する場面も増えて、自分を出しづらくなっているところはあります。
本来はどちらかというとおちゃめなタイプなんですか?
そうですね、どちらかというとそうかもしれないです。
たとえばですけど、M-1にいつか出たいなと思っています(笑)。ITイベントで真面目な話の前に芸人さんが出てきて、IT用語をお題に漫才してくれるんですけど、ああいう知的なお笑いにすごく興味があります。ITの言葉って難しいので、聞く前の緊張をほぐすみたいなことはしてみたいです。
趣味もかなり多いと聞きました。
趣味は多いですね。言えばキリがないくらい(笑)。今はチェロを弾いていて、娘がバイオリンをやっているので、一緒にジュニアオーケストラに入っています。茶道をやったり、子どものバスケットを見守ったり、ギターもやりますし、YouTubeでビジネス書の解説をしたりもしています。
オーケストラって、すごくシステムに近いなと感じています。個々の仕組みを横断してオーケストレーションし、全体として機能させることが、ある意味DXなのかなと。そういう意味では、指揮者やバラエティ番組のMCのような役割を担うのが、私たちの仕事なのかもしれませんね。